稲岡亜里子
京都府生まれ。写真家、本家尾張屋十六代当主。17歳で渡米、高校で写真と出合い、ニューヨークのパーソンズ美術大学の写真科へ進学。卒業後、ニューヨークをベースに写真家として活動を始める。2001年のアメリカ同時多発テロ事件を体験、翌年に訪れたアイスランドの水の風景に魅せられ、作品制作のため通い始める。水をたたえたアイスランドの大地を5年に渡り撮りため、2008年、初の写真集『SOL』(赤々舎 2008)を発表。この翌年から、アイスランドで出会った双子の姉妹を8年に渡り撮りため、2020年、2冊目となる写真集『Eagle and Raven』(赤々舎 2020)を発表。この間、2014年に創業550年を超える家業の十六代当主となり、本家尾張屋当主と写真家、二つの顔を持ちながら活動を続けている。アイスランドの大地から湧きだすうつくしい水、やわらかな苔、はるか長い年月そこにあり続けたであろう岩石。そして、この幻想的な自然に包まれ成長していく姉妹の撮影を通し、生まれ育った京都の水辺の風景、自らの幼少期の記憶が呼び起こされていった。身のまわりの自然に宿る八百万の神……子どものころには見えていた、目には見えない存在。日本人の魂の奥深くに流れるアミニズムが、稲岡の一貫した作品テーマである。