幼少の頃から生き物が好きだった𠮷田は、数年前、北海道にある母の生家を初めて訪れた時、豊かな自然や、山椒魚が産卵するほど澄んだ裏庭の湧き水に衝撃を受け、自分たち人間の営みが期せずして自然の豊かさを脅かしているのではという思いを巡らせるようになる。ある日、フィルムの現像作業中のミスにより、撮影した写真の中の鹿が「化学反応によって侵食」されるという「事故」が発生した。その侵食を見た𠮷田は、日々の自分の生活排水が巡り巡って遠く離れた北海道の水を侵食し汚染させる可能性があるのではと意識するようになる。この出来事に着想を得て、日常で使用する洗剤、研磨剤、歯磨き粉などの薬品類を混ぜ現像するというユニークで精緻な現像手法とともに、化学物質と生態系の対話に取り組みはじめた。本展では、𠮷田は水の循環を表現したいと考えた。人間社会の排水が、再び自然の中に戻って行く、その水の循環だ。𠮷田の作品は、鑑賞者に自然との関係に向き合うことを突き付けてくる。
HOSOO GALLERY
10:30 - 17:30
入場は閉館の30分前まで
一般:¥1500
学生:¥1200(要学生証提示)
休館日:4/12、4/19、4/26
ご入場されるお客様はオンラインでの日時指定予約が必要です。
詳細はこちら
HOSOO GALLERY
京都市中京区柿本町412 HOSOO FLAGSHIP STORE 2F & 5F
地下鉄烏丸線または東西線「烏丸御池」駅6番出口より徒歩2分
𠮷田多麻希
幼少期の影響で生き物好きに育ったこともあり、自然な流れで、日々移り行く世の中や、流行りが去ったと共に、忘れられる自然や生き物の姿を気にかけるようになる。2018年より作品の制作を重ね、自身の身に近い生物や自然の持つエネルギーを表現することを試みるため、サーモグラフィーカメラを使用して生物の息吹を可視化させる作品の制作に着手。同作品で2019年「キヤノン写真新世紀」優秀賞を受賞。また、現代の社会問題と自然や生き物への敬愛を同時に表現するためリサーチを開始。その結果を関連付ける実験的で抽象的な表現を試み、継続中のプロジェクトである〈Negative Ecology〉 で2021年「KG+ SELECT」グランプリ受賞。本プロジェクトは、野生の鹿を撮ったネガフィルムの現像失敗が契機となった。人の日常生活が、野生生物や自然界に侵食している様を想像し、東京から1000km離れ、豊かな自然が存在する北海道で撮影が始まった。撮影後、日常で使用する洗剤、研磨剤、歯磨き粉などの薬品類を混ぜ現像され作成されたネガフィルムは、汚染されダメージを受けているかもしれない野生生物や自然を表すメタファーでもある。化学薬品により損傷したネガから現れる画像は、見方によっては強く鮮やかな姿で私たちの前に表れる。
Related Events
関連イベント
2022.5.4(水) | 15:00-16:00
2022.5.4 Wed | 15:00-16:00
「10/10 現代日本女性写真家たちの祝祭」対談|𠮷田多麻希 × 仲西祐介(KYOTOGRAPHIE共同創設者/共同ディレクター) [日]
八竹庵(旧川崎家住宅)
Other Exhibitions
その他の展示
清水はるみ
mutation / creation
HOSOO GALLERY
サミュエル・ボレンドルフ
人魚の涙
琵琶湖疏水記念館、蹴上インクライン