殿村任香は、作品を通じて親密な人間関係やセクシュアリティの問題を探究している。〈母恋 ハハ・ラブ〉のシリーズでは、自分自身を、そして自分の母親の問題を取り上げた。本展の〈焦がれ死に die of love〉のシリーズでは、ぼやけながらきらめく色彩と光を通して身体の一部が立ち現れ、その背後で展開するストーリーを私たちに想像させる。悲劇と喜劇の中間に位置するような、非常に演劇的なこのシリーズで、殿村は揺れ動く欲望を描き出している。フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユが『エロスの涙』で表現したのと同じように、殿村も、すべての芸術の根源には愛と死の強烈な関係性が存在していることを証明している。また、本写真祭の期間中にSferaで行われる展示では、がんと闘い向き合う女性を賛辞するポートレートプロジェクト「SHINING WOMAN PROJECT」を発表する。殿村はこのプロジェクトにおいても、トラウマと戦うための、そして女性を賛辞するための重要なツールとして写真を活用している。本プロジェクト以降、「生きるために作品を撮る」から「撮るために生きる」という意識の変化が殿村自身にも生じる。彼女の作品は、個人的なレベルでも、また社会全体としても、トラウマ的な体験に向き合ううえで、写真が果たすことができるカタルシス的な役割を示す優れた実例となっている。